ふたたびまどろみのなかで

原口昇平のブログ

【仮訳】ICJ南ア対イ訴訟 公聴会初日 南ア原告口頭弁論(1)開始部分~冒頭陳述

原文:https://www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/192/192-20240111-ora-01-00-bi.pdf (pp.17-20)
※この暫定訳は法務分野を専門としない翻訳者が自らの学習のために作成したものであり、正確性は一切保障しません。また、原文の注は全て省略しています
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ブシムジ・マドンセラ駐オランダ南アフリカ共和国大使 裁判長、裁判官の皆様、本日は南アフリカ共和国を代表して出廷させていただき、光栄に存じます。

本法廷におかれましては、本件における仮措置命令の発出に関する南アフリカの請求を受けて、可能な限り最も早い日程で本公聴会を開催いただき、御礼を申し上げます。

われわれの訴状におきまして、南アフリカは、1948年以来イスラエルによる入植活動を通じてパレスチナの人びとが現在もなおナクバ〔大厄災〕を経験していると認識しております。パレスチナの人びとに国際的に認められた不可侵の自己決定権、および現在のイスラエル領内にある自らの町や村に難民として帰還する權利を、イスラエルは故意に認めず、組織的かつ強制的にパレスチナの人びとから土地や財産を取り上げ、パレスチナの人びとを退去させ、分断してきました。

われわれはまた特に、イスラエルグリーンラインの内外でパレスチナの人びとをアパルトヘイト下に置きながら、支配を確立するべく差別的法律、政策、慣行の体制を策定、維持してきたことを心に留めております。かように広範にわたる組織的な人権侵害が何十年にもわたり免責されてきたがために、イスラエルは増長し、パレスチナで国際犯罪を何度も繰り返しては激化させてきました。

 まず南アフリカは、イスラエル国(以下、「イスラエル」といいます)によるジェノサイドの作為または不作為が、1948年以来パレスチナの人びとに対し実行されてきた不法行為の「連続体の部分を間違いなく形作っている」ことを認めます。本訴状では、イスラエルによるジェノサイドの作為または不作為を、イスラエルによる75年に及ぶアパルトヘイト、56年に及ぶ占領、ガザ地区に強いた16年に及ぶ封鎖という広範な文脈に位置づけています。その封鎖たるや、国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWA)のある局長は「人民のサイレントキラー」と表現したほどです。

 人種差別撤廃委員会(以下、「CERD」といいます)が12月21日に警告したように、「パレスチナの人びとを標的としたヘイトスピーチやかかる人びとを人間扱いしない言説」は、ガザ地区における「人道に対する罪およびジェノサイドを防止するイスラエルと他の締約国の義務に関する深刻な懸念」を引き起こしています。この警告以後も複数の警告が相次いで発されており、中でも37人の国連特別報告者が、ガザにおける「ジェノサイド防止のための国際システムが発動されていない」と警告しています。

われわれは本日、パレスチナ国の、人権分野で活動するパレスチナの人びとの代理人として出廷しております。われわれが代理する人びとの中には、まさに数日前までガザにいたガザの住民も含まれます。ガザを何とか脱出し得たいくらか幸運なる人びとです。彼らの未来、およびいまだガザに残る彼らのパレスチナ人同胞の未来は、本件に関して本法廷が下す決定にかかっております。

私の発言を終えるにあたり、南アフリカ共和国法務大臣ロナルド・ラモラ閣下を呼び、南アフリカの実質的な冒頭陳述に入ります。

 

裁判長 ご発言ありがとうございました。それでは南アフリカ共和国法務大臣ロナルド・ラモラ閣下、ご登壇ください。どうぞご発言を、閣下。

 

冒頭陳述

ロナルド・ラモラ南アフリカ共和国法務大臣 ありがとうございます。裁判長および裁判官の皆様、この特別な事件につきまして、南アフリカ共和国を代表して皆様の前にこうして立つ機会をいただき、光栄に存じます。「はるかなパレスチナの人びとに手を差し伸べるとき、われわれは一体である人類の一員であることをしっかりと意識しながらそうするのだ。」われわれの〔民主化後の〕初代大統領、ネルソン・マンデラの言葉です。

南アフリカが1998年、ジェノサイドの罪の防止および処罰に関する条約(以下、「本条約」といいます)の締約を継承したのは、この精神においてであります。

この精神において、われわれは本件訴訟に取り組んでおります。本条約の締結国として、これこそが、われわれがパレスチナイスラエルの人びとに同じように負っている責務であります。

先に言及されたとおり、パレスチナおよびイスラエルにおける暴力と破壊は、2023年10月7日に始まったわけではありません。パレスチナの人びとはこの76年間にわたって組織的な暴力と抑圧を被ってきたのであり、それは2023年10月6日も、2023年10月7日以後も毎日続いております。ガザ地区では、少なくとも2005年以来、領空、領海、検問所、水道、電力、民間インフラ、また重要な行政機能に対し、イスラエルは支配力を行使しております。空や海からの出入りは固く禁じられており、イスラエルはわずか2か所の検問所を運用するばかりです。ガザという領域の至るところにイスラエルによる実行支配が続いていることに鑑み、ガザはいまだ、イスラエルの攻撃的な占領下にあると国際社会に認識されております。

南アフリカははっきりと、ハマスや他のパレスチナ武装勢力が2023年10月7日に民間人を標的とし人質に取ったことを非難しました。そしてこの非難は、最近では2023年12月21日付のイスラエルへの口上書の中でも改めて明確に示していました。

そこで述べたように、一国の領土に対し武力攻撃がなされたからといえ、またそれがいかに重大であれ――残虐な犯罪を含む攻撃であれ――法律上の問題としても、道徳上の問題としても、本条約に対する違反を正当化したり、弁護したりすることは決してできません。2023年10月7日の攻撃に対するイスラエルの報復はこのラインを超えてしまっており、本条約に対する違反を生み出しています。

かような証拠と、また本条約第1条に記載されているようにジェノサイドを防止するためできる限りのことをするというわれわれの責務に向き合い、南アフリカは本件訴訟を提起いたしました。

南アフリカといたしましては、イスラエルが、ジェノサイド条約締結国間で意図されているように、事前に提示した事実と提案を入念かつ客観的に検討した上で、法廷での問題解決を目的として本件訴訟に応じたことを、歓迎いたします。

今回の公聴会は、本法廷に南アフリカが仮保全措置の発出を要請したことにかかわるものであり、必然的にある限られた特定の焦点を持つこととなりましょう。私はマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉を引用いたします。「万物がたどる弧は長いが、常に正義に向かって曲がる。」

南アフリカの訴訟は、6人の弁護士チームによって提起されました。アディラ・ハシム博士、テンベカ・ンクカイトビ氏、ジョン・ドゥガード教授、ブリーネ・二フラーリー氏、マックス・デュプレッシー氏、ヴォーン・ロウ教授です。

(1)アディラ・ハシム博士(上級弁護士)がジェノサイドの行為のおそれと、ジェノサイドの行為に対する永続的脆弱性の概要を提示します。

(2)テンベカ・ンクカイトビ氏(上級弁護士)がイスラエルにおけるジェノサイドの意図と疑われるものを分析します。

(3)ジョン・ドゥガード教授(上級弁護士)が一応の管轄権について検討します。

(4)マックス・デュプレッシー氏(上級弁護士)が現在脅威にさらされているさまざまな權利について論じます。

(5)ブリーネ・ニフラーリー氏(勅撰弁護士)が緊急性と取り返しのつかない害の可能性に関する論証を提示します。

(6)ヴォーン・ロウ教授(勅撰弁護士)が仮保全措置について説明します。

それでは裁判長、ハシム博士の発言許可を求めます。よろしくお願いいたします。

 

裁判長 ラモラ閣下、ありがとうございました。それではアディラ・ハシム氏、ご登壇をお願いいたします。ご発言ください。

 

(続く)