ふたたびまどろみのなかで

原口昇平のブログ

【仮訳】ICJ南ア対イ訴訟 公聴会初日 南ア原告口頭弁論(2)第1セクション「ジェノサイドの行為」

原文:https://www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/192/192-20240111-ora-01-00-bi.pdf (pp.21-31)
※この暫定訳は法務分野を専門としない翻訳者が自らの学習のために作成したものであり、正確性は一切保障しません。また、原文の注は全て省略しています
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ジェノサイドの行為

 

アディラ・ハシム博士 ありがとうございます。裁判長、裁判官の皆様、この格別に重要な訴訟で南アフリカ共和国を代表して出廷することは名誉なことです。本訴訟は、ジェノサイド条約前文に示されているようにわれわれに共通する人間性の真の本質を浮き彫りにするものであります。

私の任務は、国際司法裁判所憲章第41条のもとでこうして〔われわれをして〕仮保全措置を緊急に要請するに至らしめたジェノサイドの行為について証言することであります。南アフリカは、イスラエルがジェノサイドの定義の範囲内に含まれる複数の行動をはたらくことによりジェノサイド条約第2条に違反したことを、強く主張いたします。かかる複数の行動には、ジェノサイドが推察される組織的行動パターンが表れております。

 

概要

アディラ・ハシム博士 これらの行為を歴史的文脈の中に位置づけることをお許しください。ガザは、1967年以来イスラエルによって占領されている、パレスチナ被占領地を構成する2つの領域のうちの1つです。現在画面に表示されている地図に描かれておりますように、およそ365km2の面積を有する細長い地区です。イスラエルはガザにおける領空、領海、検問所、水、電力、電波、民間インフラ、そして主要な行政機能のすべてに対する支配力を行使し続けています。つい先ほど法相が述べたように、空や海からガザへ出入りすることは禁じられており、イスラエルはわずか2か所の検問所を運用するばかりです。ガザは世界で最も人口密度が高い地域のひとつであり、そこにはパレスチナの人びとが230万人近く暮らしていたのであり、そのおよそ半数を未成年者が占めていました。

直近96日間、イスラエルはガザを、現代戦史上最も激烈な非核爆撃作戦のひとつといわれるものにさらしてきました。ガザのパレスチナ人は、陸海空の三方からイスラエル軍の兵器および爆弾により殺され続けています。

また、ガザのパレスチナ人は飢餓、脱水、疾病による差し迫った死の危険にもさらされています。これは、イスラエルによる包囲戦が継続され、パレスチナの街が破壊され、パレスチナの人びとへの十分な援助物資が域内に入れられず、空爆を受けているがためにこの限られた援助物資さえも分配不能となっているためであります。

現在の仮保全措置に関する段階では、本法廷がガンビアミャンマー訴訟で明らかにしたように、イスラエルの行為がジェノサイドを構成するか否かという問いに対する最終見解に、本法廷で到達する必要はありません。必要なのはただ、「少なくとも疑いのある行為の一部が...ジェノサイド条約で定められたところの範囲内に含まれ得る」ことを立証することのみであります。告発された具体的な、継続中のジェノサイドの行為を分析いたしますと、こうした行為のすべてではないとしても少なくとも一部が、本条約で定められたところの範囲内に含まれることは明らかです。

 こうした行為は、南アフリカが提出した訴状の中に詳細に記録してあり、信頼できる情報源(多くは国連)により裏付けを得ています。ですから、それらすべてを詳しく説明することはここでは不要であり、不可能です。ここでは、ジェノサイドの行為のパターンを例示するため若干の事実のみに光を当てることにいたします。依拠している国連の統計は2024年1月9日時点のものです。

南アフリカは、口頭弁論の中で、視聴覚資料を限定的に使用し、依拠する事実を説明してまいります。裁判長、われわれは控えめに、必要な箇所でのみ、常にパレスチナの人びとへの敬意をもって、そのようにいたします。

こうした背景に対し、私はこれから、いかにイスラエルの行為がジェノサイド条約第2条(a)(b)(c)(d)に違反するかを実証してまいります。

 

ジェノサイドの行為

 

2条(a):ガザのパレスチナ人を殺している

アディラ・ハシム博士 イスラエルが犯した第1のジェノサイドの行為はガザにおけるパレスチナ人の大量虐殺であり、これはジェノサイド条約第2条(a)違反です。

国連事務総長が5週間前に述べたように、イスラエルによる殺戮の規模はあまりに大きく、「ガザのどこにも安全な場所はない」ほどです。私が本日皆様の前に立つこの時点で、直近3か月以上に及ぶ攻撃の間に2万3120人のパレスチナ人がイスラエル軍により殺害されております。そのうち少なくとも70%は女性と子どもだと考えられます。およそ7,000人のパレスチナ人がいまだ行方不明であり、瓦礫の下で死亡したとみられています。

ガザのパレスチナ人はどこへ行こうとも容赦ない爆撃にさらされています。自宅でも、保護を求めた場所でも、病院でも、学校でも、モスクでも、教会でも、自分の家族のために食料と水を手に入れようとしている間にも殺されます。避難せずにいても殺されていますし、逃げ込んだ先の場所でも殺されていますし、イスラエルによると「安全な経路」であるはずの道に沿って避難を試みている間にさえ、殺されているのです。

殺戮の規模はあまりに大きく、発見された遺体はしばしば身元不明のまま、集団墓地に埋葬されているほどです。

 10月7日から最初の3週間で、イスラエル軍は1週間あたり6,000発の爆弾を展開していました。少なくとも200回、計2,000ポンドの爆弾を、「安全地帯」に指定したガザ地区南部に落としました。これらの爆弾は北部にも大きな被害をもたらしました。その中には難民キャンプも含まれます。2,000ポンドの爆弾は、使用可能な爆弾の中でも最も大きく破壊的な部類です。落としているのは、地上の標的を爆撃するために使用される強力な戦闘機。世界で最も豊富なリソースを有する軍隊のひとつによってです。

イスラエルは〔国連の表現でいうと〕「比類なき、かつ前例なき」数の民間人を殺害しています。しかも、爆弾ひとつでどれほど多くの民間人の命を奪うことになるか十分に承知していながらです。

ガザ地区パレスチナ人の家族のうち、家族構成員を複数人失った家族は1,800を超えています。そして何百という多世代家族が生存者なく全滅しています。母親たち、父親たち、子どもたち、きょうだいたち、祖父母たち、おじおばたち、いとこたちがしばしばまとめて皆殺しにあっています。

この殺戮は、まさにパレスチナ人の生活の破壊に他なりません。それは故意に行われています。誰も容赦はされません、新生児でさえもです。ガザのパレスチナ人のうち殺されている子どもの規模は、複数の国連機関の長が「子どもたちの墓地」と表現したほどです。この破壊は、申し上げているように、意図されたものであり、人道的にはもちろん法的にも、いかなる容認可能な正当化も超えてガザに荒廃をもたらしています。

 

2条(b):ガザのパレスチナ人に重大な肉体的または精神的な危害を加えている

アディラ・ハシム博士 南アフリカの訴状で明示した第2のジェノサイドの行為は、イスラエルがガザのパレスチナ人に深刻な身体的または精神的な危害を加えていることです。これはジェノサイド条約第2条(b)違反です。

 イスラエル空爆は、60,000人近いパレスチナ人を負傷させたり、四肢切断に至らしめたりしています。ここでもやはり被害者の大多数は女性と子どもです。医療体制がほとんど崩壊した状況でこれが起きています。この点については後ほどもう一度取り上げます。パレスチナの子どもを含む民間人が大勢、拘束され、目隠しをされ、衣服を脱ぐよう強いられ、トラックに載せられ、見知らぬ場所へ連行されています。パレスチナの人びとの苦しみは、身体的なものも精神的なものも、否定しようがありません。

 

2条(c):集団に対して全部または一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を故意に課している

アディラ・ハシム博士 第2条(c)違反に当たる第3のジェノサイドの行為に移ります。イスラエルは、肉体の破壊をもたらすために意図された、生活の維持を不可能にする条件をガザに対して故意に課しています。イスラエルはこれを少なくとも4つの方法で達成しています。

 第1に、強制退去によってです。イスラエルはガザにおけるパレスチナ人の約85%に退去を強制しています。逃げ込める安全な場所はどこにもありません。退去できないか、退去を拒む者は、自宅で殺されるか、または殺される極度の危険にさらされます。多くのパレスチナ人が複数回退去させられており、複数の家族が安全を探し求めて繰り返し移動を強いられています。

10月13日におけるイスラエルによる最初の避難命令は100万人超の人びとの避難を要求するものでした。対象の中には、子ども、高齢者、負傷者、体の弱い人が含まれています。複数の病院全体が避難を要求されました、新生児集中治療室に入っている早産児でさえもです。命令は、24時間以内に北部から南部へ避難するよう要求するものでした。この命令そのものがジェノサイド的です。命令は、人道支援が許可されておらず、燃料、水、食料その他の生活必需品の供給が故意に遮断されている中で、運べるものだけを持ってただちに移動するよう求めていました。明らかに、集団の破壊をもたらすよう意図されていました。

多くのパレスチナ人にとって、自宅からの強制退去は不可避的に永続します。イスラエルは今や、パレスチナ人の家では推計35万5000戸を一部損壊または全壊させており、少なくと約50万人のパレスチナ人を帰る場所がない状態に置いています。国際的な難民の人権に関する国連特別報告者によると、家やインフラは「徹底的に破壊されており、住み家を失ったガザの人びとは自宅へ帰る現実的な見通しを一切持てないようにされており、イスラエルによるパレスチナ人強制退去の長い歴史が繰り返されている」といいます。イスラエルが自ら破壊してきたものを再建する責任を引き受けるきざしは全くありません。

 むしろ、イスラエル軍は破壊を称賛しています。兵士らは、集合住宅地や街区を爆破したり、残骸の上にイスラエル旗を立てたり、パレスチナ人の住宅の瓦礫の上にイスラエル人入植地を再建しようとしたり、そのようにしてガザにおけるパレスチナ人の生活の基盤そのものを滅ぼしていく自分たちをうれしそうに動画撮影しています。

第2に、強制退去と同時に、イスラエルの行為は広範な飢餓、脱水、窮乏を引き起こすよう故意に意図されています。イスラエルの軍事作戦はガザの人びとを飢餓の瀬戸際へ追い込んでいます。「ガザの人口の93%という未曾有の割合が危機的水準の飢餓に直面している」という報道があります。世界で現在破局的な飢餓に苦しんでいる人びとの80%以上がガザにいることになります。

複数の専門家が今予測しているところでは、ガザのパレスチナ人は空爆よりむしろ飢餓と疾病でより多く死者を出す可能性がある状況です。そしてイスラエルは依然として、パレスチナ人に対する人道支援の効果的な提供を引き続き妨げています。十分な援助物資の入域許可を拒んでいるだけでなく、絶え間ない爆撃や妨害を通じてそれを容易に行き渡らせないようにしています。

まさに3日前、1月8日、複数の国連機関が計画した、緊急の医療用品と生命維持に必要な燃料を病院や医療用品センターに届けるミッションが、イスラエル当局により却下されました。これで12月26日以来、センターへの配送ミッションが却下されたのは5回目となります。この間、ガザ地区北部の5つの病院は救命に必要な医療用品や医療機器を入手できずにいます。

 入域を許可された援助物資のトラックは飢えた人びとにつかまります。提供されているものでは全く不十分なのです。[動画再生] 裁判長、裁判官の皆様、こちらはガザに到着する援助物資のトラックの画像です。

第3に、イスラエルは故意に、ガザのパレスチナ人が適切な避難先、衣服、衛生用品を得られない複数の条件を課しています。何週間にもわたり、衣服、寝具類、毛布など食料以外の必需品が深刻に欠乏しています。浄水はほとんどなく、飲用、清掃用、料理用に必要な水準を遥かに下回る量しか残されていません。

結果、世界保健機関〔WHO〕の発表によると、ガザは「感染性疾患の急激な大流行を被っている」といいます。5歳以下の子どもの下痢は、戦争行為の開始から2,000パーセント増加しています。同時感染や無治療の場合、栄養不良と疾患によって死に至る悪循環が生じます。

第4のジェノサイドの行為は条約第2条(b)に違反するもので、ガザの医療体制に対するイスラエルの武力攻撃です。これによって生命が維持できなくなっています。12月7日時点ですでに、健康への権利に関する国連特別報告者は「ガザ地区の医療インフラは完全に破壊されてしまっている」と指摘していました。

イスラエルにより負傷したガザの人びとは、救命医療を十分受けられずにいます。ガザの医療体制は、すでにイスラエルによる何年にも及ぶ封鎖とこれまでの侵攻によって機能を損なわれていましたが、絶大な規模の負傷者数に対処できなくなっています。

 

2条(d):生殖に関する暴力

アディラ・ハシム博士 最後に、成年・未成年の女子に対する暴力に関する国連特別報告者は、第4のジェノサイドの行為に含まれるであろうイスラエルが犯した行為を指摘しています。これはジェノサイド条約第2条(d)に違反するものです。

11月22日、国連特別報告者は明白に次のように警告しました。「イスラエルからパレスチナ人の女性、新生児、乳幼児、未成年への生殖に関する暴力は、〔ジェノサイド条約〕第2条に照らし合わせて、...「集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること」を含めて...ジェノサイドの行為として認められる可能性がある。」

イスラエルは、ガザで毎日180人の女性が出産していると推定される状況で、出産に不可欠な医療用品のキットを含む救命援助物資の配送を妨げています。WHOによると、これら180人の女性のうち15パーセントが、妊娠または出産に関係がある合併症を経験している可能性があり、さらなる治療を必要としています。そのような治療は全く利用不可能となっています。

 

行為のパターンが意図を示している

アディラ・ハシム博士 要するに、裁判長、以上の行為すべては、個別的にせよ集団的にせよ、イスラエルによる行為の計算されたパターンを形づくっており、ジェノサイドの意図を示しています。この意図はイスラエルの行為から明白です。

(1)ガザで暮らすパレスチナ人を特に標的としている、

(2)民間人を標的とする狙撃のほかに、人を殺す大規模な破壊をもたらす兵器を使用している、

(3)避難所を必要とするパレスチナ人に向けて安全地帯を指定しておきながら、その後これを爆撃している、

(4)ガザのパレスチナ人から、食料、水、医療、燃料、衛生、通信といった必需品を奪っている、

(5)住宅、学校、モスク、教会、病院など社会基盤を破壊している、

(6)人を殺し、深刻な傷害を負わせ、多数の子どもに保護者を失わせている。

ジェノサイドは決して前もって宣言されないものです。しかし本法廷はおかげで、過去13週間分の証拠を得ました。そこには、ジェノサイドの行為に関する信憑性が高い主張の証拠となる行為と関連意図のパターンが、議論の余地なく表れています。

ガンビアミャンマー訴訟では、本法廷は、ミャンマーラカイン州内のロヒンギャに対してジェノサイドの行為を犯しているという申し立てに対し、ためらいなく仮保全措置命令を発出しました。本日、本法廷に提出された数々の事実は不幸にもさらに荒涼たるものでさえあり、ガンビアミャンマー訴訟同様、本法廷の介入にふさわしく、それを必要としています。

 

第1セクション結論

アディラ・ハシム博士 パレスチナの人びとにとって、生命、財産、尊厳、人間性の回復不可能な喪失は毎日、増大しています。われわれに配信されるオンラインニュースには、身ているのが耐え難くなるほどの苦しみの画像が掲載されています。この苦しみを止めるものは、本法廷の命令以外にはないでしょう。仮保全措置の命令がなければ、数々の残虐行為は続くでしょう。イスラエル防衛大臣は、少なくとも1年間はこの一連の作戦を続行するつもりであることを示唆しています。

 国連事務次長の2024年1月5日の言葉から引用いたします。

「ガザに援助物資を届けるのが簡単だと思いますか? もう一度考えてください。トラックが入れるようになる前に3段階の検査があります。混乱と長い列。どんどん増える、却下された品目。一方の検問所はトラックではなく歩行者向け。他方の検問所は、トラックが絶望と飢えに苦しむ人びとに阻まれる。破壊された商業セクター。絶え間ない爆撃。問題のある通信環境。損傷した道路。撃たれる車列。チェックポイントでの遅れ。心に傷を負い消耗した人びとがどんどん小さくなる土地に押し込められていて、複数の避難所が総収容能力を長らく超えた状態になっており、支援活動をしている人自身が住み家を失い、殺されています。これが、ガザの人びとと、支援をしようとしている人びとにとっての手に負えない状況です。戦闘は停止しなければなりません。」

裁判長、裁判官の皆様、これでイスラエルによるジェノサイドの行為に関する私の陳述を終了いたします。ご傾聴いただき、ありがとうございました。ではジェノサイドの意図につきまして、ングカイトビ弁護士の発言許可をお願いいたします。

裁判長 ハシム氏、ありがとうございました。テンベカ・ングカイトビ氏、ご登壇をお願いします。ご発言ください。

(続く)